アヒルと亀と私

俺のバイトは世間でよく言うところの、デリバリー業だ。

 

デリバリーと聞いて真っ先に風の俗的なモノを思い描いた皆さんは心が汚れているので恐らくこの先は読めない。我がサイトは心の綺麗な人間しか住めない、言わば聖域。

不浄なる者はその聖なる光に身を焼かれてしまうのアッツ!何これ!何この光!身体が・・・焼かれ・・・。

 

というわけで、今は心に一寸の汚れ無きピュアッピュアな子犬に生まれ変わって改めて書き直してます。あ、書き直してますワン。

 

ぼくは今宅配の飲食店でバイトしてる訳なんですけどワン。

客層は様々おれど、自宅に直接モノを届けるわけですからやはり店舗業態に比べて少し変わったお客様は多いわけですワン。

 

ワンって書くのめんどいのでここからはヒトに進化する。進化というのは得てしてこのように生きていく上での不便を解消するために行われるエゴイスティックものなのだ。

 

何の話だっけ。ああ、そう。変わった客がわりと多いのだ。

ゴミ屋敷もあれば、5人のフィリピーナを擁するフィリピン屋敷も見たことがある。パンイチで出てくる男性なんてザラだし、時には胸元ユルユルのTシャツ一枚で出てきてそりゃもう垂モノのアッツ!ごめんなさい!アッツ!

 

ハアハア・・・し、しかし上に挙げたものはまだ序の口なのだ。

 

俺がこれまで見た中で一番驚いたお宅は、まず庭にアヒルがいた。

綺麗な新築の庭に、アヒルである。分からない人のために一応説明すると、生命保険とか勧めてくる鳥のことだ。

 

間近で見るアヒルの予想外な大きさになんとなく腰が引けながらも玄関に辿り着き、チャイムを鳴らすと意外にも綺麗な女性が迎え入れてくれた。

 

内心ホッとしながら挨拶を交わし、ふと足下を見ると大きな亀の置物があったので、その時はああ動物が好きなんだなーとか思いつつ接客を始めたと思う。

しかし、始めたはいいのだが、なんだか足が重い。重いっつーか痛いレベル。

 

なんぞなんぞと再度足下を見下ろすと、なんとさっきの亀の置物が俺の足に乗っているではないか。

え、亀の置物を引き寄せる超能力かなんか発現しちゃった?とかテンパっていると家主が

「ごめんなさーい!こら!レッドどきなさい!」

と置物を叱り始めた。え、何これ夢?

 

よくよく話を聞いてみると、どうやら俺が置物だと思っていた亀はペットで、生きているらしい。よかった、せっかくの超能力なのにめちゃくちゃニッチなやつを引き当てるところだった。

 

その後はレッドが俺のズボンをムシャムシャと頬張り始め、初めての協同作業とばかりに家主と一緒に引き剥がすというちょっとしたハプニングはあったが、接客自体はつつがなく終了。

 

帰り際、家主に動物たちの事を聞いてみるとまだ何匹かいるとのこと。少し見ていくかとの誘いに、次は虎かライオンか分からないがとにかく命の危険を感じたので断り、早々に店への帰路についた次第であった。

 

今でも思い出すとあの家はかなり衝撃的だ。でも俺があの家で衝撃的だと思ったのはアヒルでも亀でもなく、家主のお姉さんがめちゃくちゃ巨乳で尚且つユルユルのTシャツ一枚でアッツ!ごめんなさい!アッ・・・・・・・

 

 

以上、お粗末様でしたカメ。